永住権「厳格化」はいつから?決定済みと検討中を行政書士が整理

「永住権のルールが厳しくなるらしい。でも、いつから、何が変わるの?」と不安に感じている方が多いのではないでしょうか。
永住権の厳格化をめぐる動きは、2026年8月15日時点で、「もう決まったこと」と「まだ案の段階のこと」の2つに分かれます。この記事では、この2つをはっきり分けて、ひとつずつ説明します。
はじめに、ことばの補足です。ふだんは「永住権」と呼ばれることが多いですが、法律では「永住許可」や、在留資格「永住者」ということばが使われます。この記事では、読みやすさのため「永住権」も使います。
内容は、出入国在留管理庁(ビザや永住を担当する国の役所。以下「入管庁」)の発表など、公的機関の資料をもとにまとめました。
【一覧表】永住権「厳格化」はどこまで決まった?
まず、全体を表でご覧ください。「決まったこと」と「まだ案のこと」の区別が、この記事でいちばんお伝えしたいポイントです。
| 変わること | 中身 | 決まった? | いつから |
|---|---|---|---|
| 帰化審査の運用 | 法律の「5年以上」の条件はそのまま。「日本社会になじんでいるか」の審査で、原則10年以上住んでいることを求める運用に | 決定(もう始まっています) | 2026年4月から |
| 永住申請の手数料 | 1万円から20万円に | 法律は決定。金額20万円はまだ案 | 2026年10月1日以降の申請から(予定) |
| 収入のチェック | 日本人の世帯の平均より多い年収が続いているか | まだ案 | 2026年10月からの案。すでに申請中の人にあてはまる場合あり |
| 年金のチェック | 将来もらえる年金が一定の水準に届くか | まだ案 | 原則2027年4月1日以降の申請から(案) |
| 日本語のチェック | 身近な話題を自分のことばで話せるレベル(B1)か | まだ案 | 原則2027年4月1日以降の申請から(案) |
| 永住申請に必要な在留期間 | 在留期間「3年」を「最長の在留期間」とみなす取扱いが原則終了。今の在留資格で「最長の在留期間」を持っていることが必要に | 決定 | 2027年4月1日の申請分から(経過措置あり) |
| 永住権の取り消しルール | 税金などをわざと払わないこと・入管法上の義務違反・一定の重い犯罪が、取り消しの理由に加わる | 決定 | 2027年4月1日から |

「厳格化」とひとことで言っても、決まったことと案の段階のことが混ざっています。
インターネット上でもこの2つが入り混じって伝わっているため、必要以上に不安を感じやすい状況です。
永住権・帰化で「もう決まったこと」
帰化:日本に住む年数が「原則10年」の審査に(2026年4月から)
帰化とは、日本の国籍を取ることです。法律には「引き続き5年以上日本に住所があること」という条件が書かれていて、この条文は今も変わっていません。
一方で、法務省は2026年3月27日の法務大臣の会見で、審査のやり方の見直しを発表しました。同年4月からは、5年の条件を満たしたことを前提に、「日本社会になじんでいるか」を見る審査の中で、原則10年以上日本に住んでいることを求める運用に変わっています。あわせて、税金や社会保険料をきちんと払ってきたかを確認する期間も、延ばすとされています。
帰化の条件や手続きの全体の流れは、日本への帰化申請、失敗しないための手続きとポイントで詳しく解説しています。
永住申請に必要な「在留期間」の扱いが変わります(2027年4月から)
永住を申請するときは、いま持っている在留資格で「最長の在留期間」(在留資格ごとに決められた、いちばん長い期間)を持っているかが見られます。これまでは、在留期間「3年」の方も「最長」を持っているものとみなす取扱いでしたが、2027年4月1日以降の申請からは、この取扱いが原則終わります(入管庁の永住許可ページで公表済み)。
経過措置もあります。2027年3月31日の時点で在留期間「3年」を持っている方は、その「3年」の期限内に結果が出る初回の申請にかぎり、これまでどおり「最長」を持っているものとして扱われます。
永住権の「取り消しの理由」が増えます(2027年4月から)
2024年6月にできた改正入管法(外国人の在留のルールを決めた法律)で、永住者の在留資格を取り消せる理由が増えました。増えるのは、①入管法で決められた義務(住所の届け出など)を正当な理由なく守らないこと、②税金や社会保険料をわざと払わないこと、③窃盗や詐欺など一定の重い犯罪(わざと行ったものにかぎります)、の3つです(入管庁のQ&A)。始まるのは2027年4月1日です。
このうち税金・社会保険料については、支払う義務があると知っていて、払う力もあるのに、あえて払わない場合が対象です。病気や失業などで、どうしても払えなかった場合まで一律に取り消す制度ではない、と説明されています。
もうひとつ大切な点があります。取り消しの理由にあてはまっても、自動的に在留資格がなくなるわけではありません。ひとりひとりの事情を見たうえで、原則として「定住者」など、永住者以外の在留資格へ国の側で変更する仕組みも、あわせて用意されています。
とはいえ、支払いの記録の大切さは、これからますます高まります。「一度永住権を取れば終わり」ではない時代に入ったと言えます。
ほぼ決定:永住申請の手数料は20万円になる見込み
2026年5月にできた改正入管法で、永住申請の手数料の「上限」が30万円と決まりました。そして、実際の金額を20万円にする案(政令案。国が決める細かいルールの案)が発表されています。
新しい手数料は、2026年10月1日以降に受け付けた申請から適用される予定です。ポイントは「申請した日」で決まることです。許可が出た日ではありません。10月より前に申請した場合は、今までの手数料のままというルールも、法律に書かれています。



手数料は「申請を受け付けた日」で決まる設計です。
条件を満たしていて、申請の準備が整っている方にとっては、申請のタイミングがこれまで以上に大切になりました。
まだ案の段階:永住審査の新しいルールブック(2026年8月4日発表)
入管庁は2026年8月4日、永住審査のガイドライン(審査のときに何を見るかをまとめた、いわばルールブック)を新しくする案を発表しました(「永住者」の適正化に係るパブリック・コメントの実施について。
今は「こういう内容にする予定ですが、意見はありますか」と、広く意見を集めている段階です。意見はe-Govの意見募集ページで2026年9月3日まで受け付けられていて、結果によって内容が変わる可能性があります。
ここで、大事な前置きがあります。この案で示されているのは「この金額に届かないと不合格」という合格ラインではなく、審査のときに見るポイント(考慮要素)です。ひとつの数字だけで機械的に決まる制度ではありません。
収入:「日本人の世帯の平均より多いか」を見る案
今のルールブックには、「公共の負担にならず、安定した生活が見込めること」とあるだけで、具体的な金額は書かれていません(永住許可に関するガイドライン)。
新しい案では、次の2つを見るとされています。
- 家族の人数に応じて、日本人の世帯の平均収入より多い年収が続いているか(「世帯の年収」で見ます。くわしくはすぐ下で説明します)
- 将来もらえる年金の見込みが、その年収で厚生年金に30年間入っていた場合と同じくらいの水準か(足りない場合は、それを補える貯金などの資産もあわせて見ます)
「世帯の年収」は、原則として、住まいと家計をいっしょにしている家族の収入を合わせた金額です。ただし、「家族滞在」など、働くことを目的としない在留資格のご家族の収入は、合わせない案になっています。また、海外に住むご家族を扶養している場合は、いっしょに住んでいなくても世帯の人数に数えるため、そのぶん求められる年収の水準は上がります。



当事務所がこの案で特に注目しているのは、今の年収だけでなく「将来の年金の見込み」まで見るという点です。
考え方が大きく変わるため、ご自身の年金記録を早めに確認しておくことをおすすめします。
日本語:生活で困らないレベル(B1)かを見る案。例外もあります
新しい案では、B1というレベル以上の日本語ができるかを見るとされています。B1は、語学力の国際的なものさし(CEFR・セファール)のひとつで、身近な話題を聞いて理解し、自分のことばで説明できるくらいのレベルです。
ただし、全員に求められるわけではありません。たとえば、国が認める高度人材の方とそのご家族、日本の小学校・中学校・高校などに合計6年以上通った方、日本で生まれた永住者のお子さん(育てる親がB1以上の場合)などは、本人にB1を求めない案になっています。
2026年1月にこの記事を最初に公開したときは「日本語の力が求められる方向」という報道ベースの情報でしたが、具体的なレベルを示した案が、実際に発表されたことになります。
日本人などと結婚している方の特例:「結婚5年+日本に3年」へ延ばす案
永住申請には原則「日本に10年」が求められますが、日本人・永住者・特別永住者(歴史的な経緯により日本に住み続けている方とその子孫の方の在留資格)と結婚している方には、「結婚3年+日本に1年」で申請できる特例があります。新しい案では、これが「結婚5年+日本に3年」に延びます。対象の方には、申請の時期に直接ひびく変更案です。
なお、配偶者の方にかぎらず幅広い申請者について、日本の制度やルールを理解しているか、学齢期(小学校・中学校の年齢)のお子さんを学校に通わせているか、も見る案が入っています。
いつから使われる?すでに申請した人にあてはまる場合も
新しいルールブックが使われるのは、原則として2027年4月1日以降の申請からです。
ただし、「収入」と「公共の負担にならないこと」の2つだけは早く始まります(概要の資料では2026年10月からと書かれています)。この2つは、切り替えの日より前に申請して、結果を待っている途中の方の一部にもあてはまる、とされています。
逆に言うと、年金や日本語のチェックまで、すでに申請した方に及ぶ案ではありません。どの申請からあてはまるかの細かい線引きは、正式決定を確認する必要があります。
永住権の厳格化に備えて、いま準備できる「3つのこと」
細かい内容はまだ動いていますが、方向は見えています。どう決まっても無駄にならない準備を3つ挙げます。
1.税金・年金・保険料の記録を確認する
いちばん先にやりたいのはこれです。ご自身と扶養しているご家族について、税金・年金・健康保険料の払い忘れや遅れがないかを確認し、あれば早めに払っておきましょう。
ひとつ注意があります。あとから払っても、「期限に遅れた」という事実そのものは残ります。
遅れがある場合は、払うだけでなく、遅れた理由や、分割払い・猶予(支払いを待ってもらうこと)を役所に相談した記録も整理しておくと安心です。支払いの状況は、市区町村の窓口やねんきんネットなどで確認できます。
2.申請のタイミングを考える
手数料の引き上げは、2026年10月1日以降の申請分からの予定です。すでに条件を満たしていて申請を考えている方には、時期を考える材料が増えました。
一方で、新しいルールブックの案には「申請して結果を待っている人の一部にもあてはまる」項目もあるため、「急げばそれでよい」と単純には言えない状況です。ご自身の場合はどう動くのがよいか、事情に合わせた判断が必要になります。
永住申請の条件そのものは、【行政書士が徹底解説】日本の永住権申請、7つの必須条件と3つの落とし穴|許可率を高める完全ガイドで確認できます。
3.日本語の勉強と、証明の準備を進める
日本語のチェックはまだ案の段階で、どの試験や証明書が使えるのかも、今は発表されていません。
いま確実に言えるのは「B1というレベルが示された」ことまでです。日本語の勉強を進めながら、今後発表される確認方法をチェックしておきましょう。



制度が動いている時期は、インターネット上に古い情報と新しい情報が混ざります。
当事務所では、公的機関の一次情報を確認したうえで、お一人おひとりの状況に合わせてご案内しています。
まとめ:永住権の厳格化は「決まったこと」と「案」を分けて備える
2026年8月15日時点の状況をふり返ります。
- 決定:帰化は、法律の「5年」の条件はそのままに、実際の審査で「原則10年」を求める運用に(2026年4月から)
- 決定:永住申請では、今の在留資格で「最長の在留期間」を持っていることが必要に(2027年4月1日以降の申請から。経過措置あり)
- 決定:永住権の取り消しの理由が増える(2027年4月1日から。税金などをわざと払わない場合や一定の重い犯罪などが対象で、自動的な取り消しではありません)
- ほぼ決定:永住申請の手数料20万円(2026年10月1日以降の申請から適用の予定。法律では上限30万円が決定済み)
- まだ案:収入・年金・日本語・結婚している方の特例などの新しい審査ポイント(意見募集は9月3日まで)
- 今できる準備:支払い記録の確認と整理、申請タイミングの検討、日本語の勉強
不安をあおる情報も多い時期ですが、決まったことと案のことを分けて見れば、いま何をすべきかは整理できます。
「自分の場合はどうなるのか」「いつ申請するのがよいのか」など、個別のご相談は当事務所のビザ申請サポートをご覧のうえ、お気軽にお問い合わせください。まずは無料相談から、ご一緒に状況を整理しましょう。


プロフィール
行政書士・鈴木恵。日本と上海の大学を卒業後、約12年間、国際線客室乗務員として勤務。多国籍のお客様との出会いを通じて、日本での留学や就労を目指す方々の夢に触れる。行政書士として、在留資格の申請をはじめとする外国人支援に注力中。
「飛行機を降りたその先にも寄り添える存在に」をモットーに、ひとりひとりの過去・現在・未来を大切に、丁寧にサポートしています。



「こんなことで相談していいのかな?」と思うような小さなことでも、どうぞ気軽にお問い合わせくださいね。
